いわゆる賃金のデジタル払いが2023年(令和5年)4月から可能になります。
2023年(令和4年)11月、賃金のデジタル払いを可能とするための「労働基準法施行規則の一部を改正する省令」が公布されました。
施行期日は、2023年(令和5年)4月1日とされています。
賃金のデジタル払い制度の概要
賃金のデジタル払い制度の概要は、次のとおりです。
賃金の支払方法については、通貨のほか、労働者の同意を得た場合には、銀行その他の金融機関の預金又は貯金の口座への振込み等によることができることとされています。
キャッシュレス決済の普及や送金サービスの多様化が進む中で、資金移動業者の口座への資金移動を給与受取に活用するニーズも一定程度見られることも踏まえ、この度、使用者が、労働者の同意を得た場合に、一定の要件を満たすものとして厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者の口座への資金移動による賃金支払(いわゆる賃金のデジタル払い)ができることとしました。
資金移動業者の指定要件等については、労働政策審議会労働条件分科会において、公労使の代表に議論いただいた上で、定められました。
(引用元:厚生労働省『資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について』)
賃金のデジタル払いは、賃金の支払・受取の選択肢の1つです。労働者が希望しない場合は賃金のデジタル払いを選択する必要はありません。会社は希望しない労働者に強制してはいけません。
資金移動業者の指定の要件
資金移動業者の指定受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 破産等により資金移動業者の債務の履行が困難となったときに、労働者に対して負担する債務を速やかに労働者に保証する仕組みを有していること。
- 口座残高上限額を100万円以下に設定又は100万円を超えた場合でも速やかに100万円以下にするための措置を講じていること。
- 労働者に対して負担する債務について、当該労働者の意に反する不正な為替取引その他の当該労働者の責めに帰すことができない理由により当該労働者に損失が生じたときに、当該損失を補償する仕組みを有していること。
- 最後に口座残高が変動した日から少なくとも10年は口座残高が有効であること。
- 現金自動支払機(ATM)を利用すること等により口座への資金移動に係る額(1円単位)の受取ができ、かつ、少なくとも毎月1回は手数料を負担することなく受取ができること。また、口座への資金移動が1円単位でできること。
- 賃金の支払に関する業務の実施状況及び財務状況を適時に厚生労働大臣に報告できる体制を有すること。
- ①~⑥のほか、賃金の支払に関する業務を適正かつ確実に行うことができる技術的能力を有し、かつ、十分な社会的信用を有すること。
指定を受けた資金移動業者(指定資金移動業者)が①~⑦の要件を満たさなくなった場合には、指定を取り消されることがあります。